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山田進太郎D&I財団が理工系学部の『女子枠』実態調査2024を発表

2024/03/22

 山田進太郎D&I財団は、2024年1月から2月にかけて理工系学部で「女子枠」を導入している全国の大学を対象に「女子枠」導入の背景や目的、効果などについてアンケート調査を実施し、2025年度以降導入予定の1校を含む24大学から回答を得た。また、一部の「女子枠」導入大学に対しては、その具体的な取り組みや結果について聞き取り調査を行った。

 調査によると、すでに「女子枠」入試を導入している23大学のうち、2020年度以前に導入したのは3校、2023年度以降に導入した(する予定)大学は21校となった。背景には2022年6月の文部科学省通知「令和5年度大学入学者選抜実施要項」において「多様な背景を持った者を対象とする選抜」の工夫が奨励され、特に「理工系分野における女子」が言及されたことにある。

 この結果、多くの大学において「女子枠」入試を導入する動きが急速に広がり、アンケート回答データでも2023年度以降に女子枠を導入する大学が急増した。一方で、「女子枠」の導入が将来的にどのような影響をもたらすか、特にSTEM分野における女性の進出にどのような変化をもたらすかは今後の継続的なモニタリングが重要となる。

 大学が女子枠を導入する際に最も期待していた効果については、学部の多様性と活性化(87.5%)、優秀な女子学生の獲得(83.3%)、学部のジェンダーバランス改善(79.2%)の順で多かった。「女子枠」を導入することによって、大学が質の高い女子学生を集め、教育環境のジェンダーバランスや多様性を向上させる期待が強いことを示唆している。

 一方で、入学した女子学生にとって学びやすい環境(ハード/ソフト面)や入学後のサポートに関する期待は3割程度で、副次的効果としての期待にとどまった。今後の取り組みにおいては、これらの要素も具体的に検討がなされ、女子学生が充実した学びの場を得るための環境整備が進むことが期待される。

 2024年度「女子枠」入試の応募状況において、非公開等の5大学をのぞく19大学のうち、定員を上回る応募あるいは同数程度だった大学は12校であり、定員を下回った大学は7大学。定員を下回った大学はすべて2024年度入試からの導入となっており、高校訪問やパンフレットなどによる周知等の広報活動の不足や、女子枠の定員数の問題なども原因と考えられる。

 「女子枠」入試導入時期による成果の違いも見られた。2020年度入試以前からの導入大学では、2016年度入試の導入から8年で10%だった工学部の女子学生比率が15%となったり、卒業後、約半数の女子が大学院に進学し、意欲的な女子学生が研究面でも貢献するなど、具体的な成果が出た。

 一方、2023年度以降の導入大学では、具体的な成果はまだ顕在化していない大学が多いが、当初の期待通り、優秀な女子学生の獲得には成功したため、2025年度からは「女子枠」入試の対象となる学科・専攻を工学部において拡充し、女子枠の増加を計画している大学もある。

 「女子枠」入試導入にあたっての大学内外からの反応については、否定的なコメント等があった大学が45.5%と約半数を占めた。偏見や逆差別への対処として、制度の目的や必要性を社会に明確に発信し、女子枠入学者のスティグマ化を防ぐ対策が必要とされる。「理工系学部の『女子枠』実態調査2024」の完全版は、財団公式サイトで公開している。

回答した24大学(五十音順):
愛知工科大学 / 大分大学 / 大阪工業大学 / 神奈川工科大学 / 金沢大学 / 北見工業大学 / 熊本大学 / 高知工科大学 / 山陽小野田市立山口東京理科大学 / 芝浦工業大学 / 島根大学 / 大同大学 / 電気通信大学 / 東京工業大学 / 東京理科大学 / 東北工業大学 / 富山大学 / 名古屋大学 / 新潟工科大学 / 人間環境大学 / 兵庫県立大学(工学部) / 福井工業大学 / 山梨大学 / 宮崎大学

参考:【山田進太郎D&I財団】理工系学部の「女子枠」実態調査2024 アンケートから読み解く、24大学の「女子枠」制度の現在地と展望

大学ジャーナル https://univ-journal.jp/

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